昨今、建設工事現場ではスマホやタブレットなどのアプリを利用して工事の進捗管理や関係業者との情報共有を行う事例が増えています。現場の状況を写真や動画で撮影し、共通のプラットフォームに保存することによりリアルタイムな情報共有が可能になります。
一方、建設工事などの新規設備とは違い、既存設備の管理、修繕などを行う設備メンテナンスの分野では従来の紙での点検項目チェック、報告書の作成などを行っている場合が多く、まだまだIT化による業務効率化の余地が残されていると言えます。
そこで、本記事ではスマホアプリで解消できる設備メンテナンス業務の課題や実際の活用事例を紹介します。是非、スマホアプリを用いて設備メンテナンスの業務効率化を検討されている方に参考にして頂ければと思います。
設備メンテナンス業務が抱える課題
設備メンテナンス業務の目的は「生産設備を安全に長く稼働させること」ですが、従来通り紙媒体で記録や情報管理を行う現場では次のような課題があります。
設備の正常状態が分からない
設備の異常を判断するためには、設備の正常状態を正確に把握しておく必要があります。異常の判断基準として見た目、温度、圧力、振動、電流値、音など様々ですが、導入時の試運転記録などが適切に管理されていない場合、当時の記録が参照できず、どの状態が正常なのか不明確になります。これにより、仮に異常が発生していた場合にもその異常に気づかない場合があります。また、予防保全の観点からも正常状態を把握し、設備の状態が日々どのように変化して行くのかを適切に管理していくことが重要です。
過去のトラブルを活用できない
設備に異常が発生し、対応方法を検討する場合、過去のトラブル事例が参考になります。仮に過去に同様のトラブルがないか、どのように対応したのか、どの業者に問い合わせればいいのかなどの情報が整理されていなければ、都度過去の報告書を探す必要があり、手間がかかります。過去のトラブル事例を活用するためには日頃からデータとして蓄積し、いつでも参照できる状態にしておく必要があります。
工程管理が煩雑
設備は一定期間稼働させると消耗品の交換や摩耗箇所の補修などが必要となりますが、生産設備を停止させないとメンテナンスできない機器の場合は改修工事を定期修繕工事期間内に完了させる必要があります。一方、工場やプラントの定期修繕工事期間は多くの機器のメンテナンスが同時に行われるため、工程管理が煩雑になります。また、新設の場合と異なり修繕期間中に新たな問題が発覚することもあるため、設備メンテナンスにおいて工程管理は非常に難易度の高い業務になります。
関係者が多く情報共有が難しい
設備メンテナンス業務では改修工事などを行う際に、実際に工事を行う工事会社、機器を提供するメーカー、進捗を管理する担当など関係者が多岐にわたり、情報共有に手間がかかります。リアルタイムな情報共有を行うためにはメールや電話などの従来のやり方とは別の仕組み作りが必要です。
これらの課題は、設備メンテナンスに特化したスマホアプリやクラウドサービスを活用すれば解消することが可能です。
設備メンテナンス業務でスマホアプリが使える理由
製造現場や設備メンテナンスなど、現場情報が重要となる業務では業務改善ツールとしてスマホアプリやクラウドサービスは非常に有効です。従来、多くの企業がデスクトップPCで利用しているローカルソフトウェアと違い、スマホアプリやクラウドサービスには次のような特徴があります。
現場で入力、保存が出来る
設備メンテナンス業務では改修工事の進捗や日頃の設備の状態など、現場の情報が重要になりますが、スマホを活用すれば記録する情報に写真や動画も合わせて、現場で入力、保存が完了できます。これによりデジタルカメラで撮影して事務所でデータを入力するのに比べ、工数を大幅に削減出来ます。また、過去の情報を参照する場合にもスマホアプリであれば、Wi-Fiなどの通信環境がなくても携帯回線による通信ができ、現場で仕様書や図面、取扱説明書などを確認することが出来ます。デスクトップPCとは違い、現場で全て完結できるのがスマホアプリの最大の利点です。
導入にかかる投資額が小さい
既存のスマホアプリはスマートフォンやタブレットがあれば簡単に導入できるので、新たなソフトウェアを開発する場合に比べ大規模な投資が必要ありません。また、有料アプリの場合でも、月額課金制を導入しているものが多く、アカウント数を制限すればスモールスタートができ、導入後に成果が出ない場合は利用を取り止めることが出来ます。これにより多額の予算を掛けたにも関わらず成果が出ないというリスクを回避することが出来ます。
タッチパネルなので操作が容易
スマホアプリの場合はタッチパネルなので感覚的に操作でき、PC操作が苦手な方でも利用しやすいです。特に年配の方が多い現場の場合、PCのソフトウェアに比べ、スマホアプリは受け入れられやすくなります。これにより新たなツールを導入しても使い勝手が悪く、結局従来のやり方に戻るリスクを防ぐことが出来ます。
設備メンテナンス業務でのスマホアプリ活用事例
実際に設備メンテナンス業務でスマホアプリが活用されている事例として公開されているものをご紹介します。
活用事例①:360度カメラの写真とクラウドで情報共有
水処理設備を提供するミズカラ株式会社が提供する情報共有化ツールは、360度カメラで撮影したパノラマ写真を配置図等の図面上に配置し、写真の中にある各機器類に取扱説明書、メンテナンス履歴、設備機能等のデータを登録、共有化できるというものです。現場写真と周辺データを紐づけ、クラウド上で管理を行うことでトラブル発生時に顧客と迅速に情報を共有でき、トラブル解決にかかる工数の削減につながっています。
⇒「アプリで設備を「見える化」驚きのコストダウンツール」
https://atss.co.jp/media/panorama-costdown-1/
活用事例②:クラウド型ビル管理システムで点検精度の均一化
設備メンテナンスを専門に行う相鉄企業株式会社ではオムロン株式会社と共同でビル管理システムに特化したアプリを開発し、運用されています。従来、紙で保管していた設備の点検結果や異常と判断する閾値を全てアプリ上で管理することで欲しい情報にアクセスするまでの時間短縮や作業者の習熟度の違いによるヒューマンエラーを解消されています。
⇒「クラウド型ビル管理システムFacility Logの導入事例」
https://socialsolution.omron.com/jp/ja/products_service/monitoring/FacilityLog/case01.html
活用事例③:点検結果を一元管理することで「予防保全」を実現
株式会社デンソー岩手では八千代エンジニヤリング株式会社が提供する設備メンテナンス特化アプリ「MENTENA」を用いて日常の点検結果をサーバー上で管理し、設備トラブルを未然に防ぐ予防保全に活用しています。予防保全では点検項目が非常に多くなるため、紙のデータ管理では収集が付かず、IT化させることで作業の効率化が実施出来ています。他にも様々な企業で導入された事例が紹介されており、設備メンテナンスでのスマホアプリ活用の参考になります。
⇒「高品質な保守業務を展開するために必要だった、MENTENAの導入」
https://lp.mentena.biz/interviews/case06.html
これらの事例以外にも、設備のメンテナンスに特化したアプリやクラウドサービスは市場に多く投入されており比較的低予算で導入することが可能です。
設備情報を蓄積できる「Proceedクラウド」とは
最後に当社が提供している「Proceedクラウド」についてご紹介します。Proceedクラウドは縦軸を部材、横軸を工程としてスマホカメラで撮影した現場写真をもとに工程管理を行うツールで、設備メンテナンスの工事進捗管理ツールとして利用できます。Proceedクラウドを利用することで、煩雑化した工程の状況を業者間でリアルタイムに共有でき、情報共有にかかる工数を大幅に削減出来ます。
また、新規設備であれば試運転記録、仕様書を添付しておけばいつでも欲しい情報にアクセスすることができ、トラブル対応時のタイムロスを低減できます。Proceedクラウドについての詳しい説明は次のリンクをご参照ください。

また、Proceedクラウドの実際の現場での活用事例についてはこちらで詳しく解説しています。
Proceedクラウドの活用事例>>
まとめ
本記事の内容をまとめると次のようになります。
- 設備メンテナンスには現状の正しい把握、過去トラの活用、工程管理、情報共有などに課題がある。
- スマホアプリは操作性が高く、現場で全て完結できるので設備メンテナンスの業務効率化に最適。
- 設備メンテナンスに特化したアプリが様々な企業で導入されている。
スマホアプリは比較的少額で小さく始めることができ、上手く行けば拡大という方法を取れるので、業務効率化を行いたい場合は是非一度検討してみてはいかがでしょうか。生産現場のスマホアプリ活用事例に関してはこちらの記事でも解説していますので合わせてご覧ください。