生産現場の業務効率化にスマホアプリの導入は非常に有効です。ただ、これまでに長く同じ方法で生産を行ってきた現場では新たな手法が活用されなかったり、既存のアプリだけでは現場特有の課題に対応できず、IT化が中々進まなかったりということも多いのではないでしょうか?
本記事ではスマホアプリに関して生産現場が抱える課題や実際の活用事例について紹介します。
生産現場をIT化するときの課題
生産現場にIT技術を導入し業務効率化を図ろうとすると多くの場合、次のような課題に直面します。
業務が複雑で適合するソフトウェアが存在しない
生産現場の業務は品種ごとに工程が変わるため、業務内容が非常に複雑です。そのため、既存のソフトウェアを組み合わせるだけでは現状の課題を解消することが難しい場合があります。また、自社に合うソフトウェアを1から開発するとなると多額の費用が掛かるため、導入へのハードルが上がります。
IT機器の操作に不慣れな人が多い
従来、紙の帳票などで管理を行ってきた生産現場ではIT機器の操作に不慣れな方も多く、新たなソフトウェアなどを導入しても使い勝手が悪く、利用されない場合があります。そのため、生産現場のIT化を行う際には機器の操作に不慣れな方が多いことを考慮し、如何に使いやすくするかを考える必要があります。
Wi-Fiなどの通信環境が整備されていない
新たなソフトウェアを導入し、デスクトップ型のPCを設置してもWi-Fiなどの通信環境が整備されていなければ、通信インフラから構築させる必要があります。また、生産現場では作業者が作業の合間に扱えないと解消できない課題も多く、現場での扱いやすさも考慮する必要があります。
成果が出るまでに時間がかかる
IT技術の導入による成果は、生産設備のように導入後すぐに分かるものではなく、結果が出るまでに時間がかかります。そのため、導入時の投資採算性を算出するのが難しく、多額な予算を投入しにくいです。そのため、実際に導入を行う際には成果が確認できるよう如何に低予算でスモールスタートが出来るかが重要です。
生産現場でスマホアプリが使える理由
これらの課題を踏まえた上で生産現場において、スマホアプリやタブレット機器の導入は非常に有効です。
操作が容易
スマホやタブレットはタッチパネルのため感覚的に操作でき、操作性が非常に優れています。また、最近では年配の方でもプライベートでスマホを利用している場合が多く、PCの扱いに不慣れな方でも簡単に使いこなすことが出来ます。
データの入力、保存が簡単
スマホアプリの場合、入力したデータはその場で保存できるため、デスクがなくても現場のみで作業を完了させることが出来ます。また、スマホアプリであれば写真、動画、位置情報なども同時に記録できるため、大量の情報を正確に残すことが出来ます。
投資額が小さい
スマホアプリの場合、スマホやタブレットにインストールするだけで利用できるため、新たに高額な設備を購入する必要もなく、投資額を抑えることが出来ます。また、最近ではアプリ開発環境の整備が進んだこともあり、比較的低額でオリジナルアプリを共同開発出来る企業も増えています。スマホアプリは低予算で効果確認が出来るという点でソフトウェアの自社開発に比べると投資リスクを抑えることが出来ます。また、スマホアプリの場合は携帯回線を利用すればWi-Fi環境を構築する必要もないのも投資額を抑えることが出来る一つの要因と言えます。
生産現場でのスマホアプリ活用事例
実際に生産現場でスマホアプリを活用し、業務効率化を行った事例で公開されているものを紹介します。
活用事例①:紙での情報共有を刷新し、製造不具合トラブルをゼロに
フォークリフトのフォークを製造している芙陽工業株式会社ではサイボウズ社の提供するkintoneを利用して製造現場のIT化を実施しています。製造予定を可視化して申し送りを記録する「製造負荷管理アプリ」「作図依頼アプリ」「外注加工依頼アプリ」など合計で250を超えるアプリを運用しているようです。アプリの活用により、現場が見える化され、製品品質の向上、出荷ミスの減少、収益の安定などの効果が出てきます。
⇒「kintoneで製造現場を改革。現場の見える化によって製品の品質向上を実現し、製造不具合トラブルをゼロに」
https://kintone-sol.cybozu.co.jp/cases/fuyo-industrial.html
活用事例②:紙の帳票をデジタル化して作業品質を平準化
車体部品メーカーの株式会社ジーテクトでは金型の検査工程にて紙で印刷したチェック項目を都度確認するという方法から、スマホアプリを活用し、画像や動画で検査基準を確認しながら検査を実施できるようになり、作業者ごとの検査結果のバラつきを低減させています。
また、Salesforceなどの既存のアプリとも連携させ自ら開発したアプリを起点に業務を効率化させています。既存のアプリを利用するだけではなく、自分達でアイデアを出し合い、実際の業務に則したアプリを開発するという姿勢はとても参考になります。
⇒「現場業務に最適な入力画面を自分たちで作成。業務のデジタル化を推進」
https://www.unifinity.co.jp/case-study/g-tekt
活用事例③:工事立ち合い記録アプリでベテランノウハウを見える化
NTT東日本グループの一員である東日本-南関東では工事の立ち合い記録アプリを開発することでベテランのノウハウ継承に活用しています。また、現場と図面の状況が違っていれば位置情報などを記録し、いつでも参照できるようにしています。スマホにはGPS機能が搭載されているため、動画や写真だけでなく位置情報を組み込めるというのもスマホアプリの強みだということが良く分かります。
⇒現場の”匠の技”記録アプリを2日で作り、技術継承を効率化
https://plat.io/ja/case/ntt-minamikanto
建設現場の工程管理等とは違い、現場ごとに課題が変わるため簡易なアプリを1から開発するという場合が多いようです。既存のソフトウェアとの連携が取りやすいというのもスマホアプリの強みの一つと言えます。各事例紹介ページには上述以外の事例も多く掲載されているので是非参考にしてみてください。
生産現場に特化したスマホアプリ「Proceedクラウド」とは
最後に当社が開発、提供している「Proceedクラウド」についてご紹介します。Proceedクラウドは縦軸を部材、横軸を工程として現場写真をもとに工程管理を行うことが出来るアプリで、生産現場の見える化、技能継承、工程管理に活用できます。Proceedクラウドを利用することで、部材ごとの検査基準の標準化、製造時の注意事項などを全て一見化させることが可能で、現在多くの重工業、造船業等の現場で活用いただいております。煩雑化した現場工程の見える化を検討している方は是非参考にしていただければと思います。
Proceedクラウドの詳しい説明についてはこちらをご参照ください。
Proceedクラウド>>
Proceedクラウドの活用事例についてはこちらで詳しく解説しています。
Proceedクラウドの活用事例>>
まとめ
本記事の内容をまとめると次のようになります。
- 生産現場のIT化には適合性、操作性、通信環境などの課題がある。
- スマホアプリであれば操作性が高く投資額を抑えて導入検討が出来る。
- 実際に写真、動画、位置情報などを取り込みながら様々な生産現場でスマホアプリが導入されている。
本記事にて紹介した事例以外にも、生産現場のスマホアプリ活用については様々な事例が紹介されているので、検討されている方は調査されてみてはいかがでしょうか。同じ現場でも観点を変えた設備メンテナンス業務でのスマホアプリの事例についてはこちらの記事をご参照ください。