製造業において、AI(人口知能)、IoT(モノのインターネット)などのIT技術の進展により業務のIT化が進んでいます。IT化により、現場のデータを取得することができるようになったことで、工場の「見える化」が注目されるようになりました。
一方で「工場の「見える化」とは何か?」「なぜ工場の「見える化」が求められるのか?」「工場を「見える化」することによりどういった効果があるのか?」などといった疑問をお持ちの方がいらっしゃるかと思います。 この記事では工場の「見える化」の概要と目的、具体的な事例について紹介します。
工場の「見える化」とは
工場の見える化とは、現場の生産状況がデータとして蓄積され、それらのデータをパソコンやスマートフォンの画面上に可視化させることを言います。
また、蓄積されたデータを画面上に見せるだけではなく、製造ラインで動いている機械の稼働データが蓄積して稼働状況を分析したり、工場内の設備で異常が発生した際にアラートの通知を受けたり、等といったことも「見える化」の定義に含まれる場合があります。
工場の「見える化」により社員が工場内の各工程の作業進捗状況、工場設備や機械の異常を検知できるようになります。
工場の見える化が求められる理由
工場の見える化が求められる理由はさまざまです。主な理由として以下の3点が挙げられます。
生産性の向上
工場の「見える化」が実現すると工場内の設備の稼働状況や在庫量、生産進捗などをリアルタイムで把握することができます。各工程の進捗状況が見えないことによる納期遅れや在庫切れなどが減るため、生産性が向上します。
さらに、見える化により、作業の進捗管理や在庫管理も行うことができ、俯瞰して作業状況を把握することができるようになるため、業務の無駄を省くことが容易になります。
コストの削減
見える化により人件費や修理費、出張費などのコスト削減が可能です。例えば、稼働状況がパソコンやスマートフォンから遠隔で確認できるようになることで、わざわざ現場に出向いて行っていた工場設備の監視業務事態を無くすことができます。それにより、人件費の削減につなげることが可能です。また、遠隔で監視できることにより、移動コストを削減することにもつながります。
さらには、機器の状態や変化を常に把握できるため、不具合や故障を発生する前に部品を交換するなどといった故障の未然防止などが可能であり、生産ラインの停止を防ぐことができます。
品質面の向上
集まった製品のデータを分析することにより、製造方法の改善や設備トラブルの発生しづらい環境の整備に役立ちます。熟練の職人のスキルやノウハウが動画や電子マニュアル等に残ることで、若手社員へのノウハウや技術の伝承が容易になります。
工場の見える化に成功した事例
ダイキン工業株式会社の「工場IoTプラットフォーム」
家電を製造・販売しているダイキン工業株式会社(以下、ダイキン)にて、「工場IoTプラットフォーム」と呼ばれる仕組みを構築されています。それによりデータの見える化を実現しています。
ダイキンでは、需要変動に柔軟に対応できるような生産体制を構築してきたものの、市場環境の変化のスピードがさらに上がってきたことにより、より一層の生産体制の柔軟化が求められるという課題に直面しています。そのため、サプライチェーンの最適化、エンジニアリングチェーンの最適化、情報領域の深化を念頭にモノづくりを行い、製造コストの削減と製品差別化による競争力強化を図ることとしました。
具体的な施策としては、工場内にある設備にIoTデバイスを取り付けて、生産ログや制御データ、設備の稼働・停止の状況を示すデータを収集しています。また、製造ラインのそばに「IoTプロジェクトセンター」という複数のディスプレイが投影された部屋を設置し、そこで各ラインの状況をディスプレイから監視できるようにしました。「IoTプロジェクトセンター」で生産状況の見える化と分析を行うことにより、設備の故障などの異常、生産の遅れを事前に検知する体制を整え、生産体制の柔軟化を図っています。監視業務だけでなく。「IoTプロジェクトセンター」にメンバーを集め、データに基づいた企画業務も行っています。
今後は「工場IoTプラットフォーム」を海外拠点と連携し、各拠点でアプリ開発を可能にすることで、より一層グローバルでの利活用を目指しています。
沖電気工業株式会社の「バーチャル・ワンファクトリー」
電気メーカーの沖電気工業株式会社(以下、沖電気)では大量生産だけでなく、個々の顧客のニーズに合わせた製品・サービスの販売に対する対応の必要性や社会変化による需要減に対する危機感を持っていました。
また、各工場で異なる製品を生産していますが、設計部門は各工場に最適化した仕様設計をしており、図面の描き方や技術標準がそれぞれ異なるなど、共通する部品であっても共通の仕様による生産ができない状態でした。
上記の課題を解決するために、今まで工場ごとに分かれていた、設計部門から出される図面等などの各種設計情報を共通化しました。具体的には、各工場の生産形態の特徴や製造に対する考え方、知見等を整理・把握し、設計デ-タを各工場で受け取れるようにしています。
これにより、工場間の連携が活発化し、多品種少量生産のニーズの取り込みが可能になりました。また、図面や技術標準が統一かされたことにより、人手不足に対応した工場間の負荷分散などが可能になり、外部環境変化への対応が容易になりました。
株式会社アドバンテックの外注先の納期・進捗管理
アメリカ、アジア、ヨーロッパに拠点を構える部品メーカーである株式会社アドバンテック(以下、アドバンテック)では、外注先の納期・進捗管理を行うために「Proceed Cloud」と呼ばれる現場の見える化を実現するためのシステムを導入しています。
アドバンテックでは取引先にもアカウントを付与し、取引先にて写真をアップロードすることで、現場の様子を確認して進捗管理を行っています。
Proceed Cloudを導入する前は、海外の工場に足を運んでいたものの、導入後は現場の様子が遠隔から確認することができるようになったため、大きな安心感を得ることができるようになったとのことです。また、取引先からの連絡を待たずして、現場の様子を写真で確認できるようになったことも効果の一つです。
遠隔で現場の様子を把握できるようになったことにより、出張の回数が減り、業務効率化と経費の削減に成功しています。またこれまでは進捗や工程管理を重点的に見ていましたが、Proceed Cloudを使うことにより、部品の手配漏れも確認することができるようになりました。
Proceed Cloud(Proceedクラウド)の紹介

Proceed Cloudは株式会社東京ファクトリーが提供する、現場の生産状況の見える化を実現するためのクラウドサービスです。具体的にはパソコンの画面上から工場内の状況を写真で把握することができます。
Proceed Cloudを導入することにより、具体的には下記の効果を得ることができます。
写真検索の手間を削減し製造情報の共有をスムーズに
Proceed Cloudのモバイル版のアプリを使うことで、部材と製造工程を写真に残すことができます。残した写真はパソコンやタブレット上で確認することができますので、部材と工程などの状況をリアルタイムで把握することが可能です。
進捗管理機能により外注先のリモート進捗管理が可能に
Proceed Cloudに工程情報を登録することで日次の工程管理を行うことができます。工程ごとに写真を残すことができ、作業者が現場の写真をProceed Cloudへ保存することで、現状をリアルタイムでシェアすることができます。そうすることにより進捗管理者が進捗状況をより把握しやすくなります。
生産情報データベースの構築による技術伝承
写真への書込みやコメント機能、検索機能などが搭載されているProceed Cloudを日常業務で利用するだけで、製造情報データベースに現場のデータが蓄積されます。そのため要領書や手順書などのマニュアル作成の手間を省くことができますし、細かい製造上の勘所をProceed Cloud上に残していくことが可能です。そのため、若手社員への技術伝承も容易になります。
多くの会社様への導入実績
Proceed Cloudは多くの製造業のお客様にご利用いただいています。詳しい導入事例については下記のリンクをご参照ください。
工場の「見える化」は現場の状況が可視化されている状態
工場の見える化とは、現場の生産状況がデータとして表れ、可視化されている状態のことを指します。具体的には、各工程や作業、設備の進捗状況や機械の異常を検知できるような仕組みを整えることを意味します。工場のDX化を行うことにより、生産性向上、コストの削減、品質向上を実現することができ、さまざまな事例が存在します。
Proceed Cloudを活用することにより、サプライチェーンを通した製造情報の見える化と製造情報データベースの構築を行うことができます。パソコンやスマホから製造情報や技術者のナレッジを文書・画像・画像などを用いて共有することが可能ですので、是非ともご活用ください。 本記事が、皆さんの課題解決の一助となれば幸いです。