製造業において高品質な製品を作るために、製造現場を遠隔監視するサービスが注目されています。近年、製造業は慢性的な人材不足や熟練技術が伝承できないといった課題が生じています。特に製品の品質を向上させるために、熟練者による現場へのサポートが必要です。
しかし、工場や現場を遠隔監視する仕組みといっても、「具体的にどのようなサービスがあるのか」、「導入することによるメリットは何か」などといった疑問をお持ちの方がいらっしゃるかと思います。
この記事では製造現場の遠隔監視に関する概要や目的、活用事例、代表的な製品を紹介します。
製造現場の「遠隔監視」とは
製造現場の「遠隔監視」とは、製造現場の映像や音声をネットワーク上で共有し、熟練者や現場監督が遠隔で技術指導を行うことです。ここでは製造業における「現場」は製品を開発している工場や製造所を想定しています。
なぜ現場を遠隔監視する必要があるのか
省人化
日本の製造業は人口減少、少子高齢化といった社会背景が重なり、人材不足に陥っています。そのため、業務を少ない人数でも回せるようにすることが求められています。
遠隔監視が実現すると工場設備が問題なく動いているかどうかを監視する業務を行う従業員を現場に常駐させる必要がなくなります。そのため、より少ない人数で監視業務を行うことができるようになりますので、業務の省人化につながります。
業務の効率化
これまでは現場に行かなければ工場設備の状況を把握できず、監視業務に時間を要していました。
遠隔監視を用いると一つの画面から工場内のさまざまな設備を確認することができます。製品によってはデータを収集することにより、製造プロセスや稼働率などの把握が可能です。これにより監視業務を効率的に行うことが可能になります。
低コスト化
人件費をはじめとしたコスト削減が可能です。機器の状態や変化を常に把握でき、不具合や故障を発生する前に予防保全が可能であり、生産ラインの停止を防止することができます。さらに遠隔地への出張コストの削減にもつながります。
遠隔監視サービスの活用事例
これより、実際に遠隔監視サービスを導入した企業の活用事例を紹介します。
活用事例①:検診作業の自動化
生産拠点の設備を管理・維持を担っているNECファシリティーズ株式会社では、受託している半導体製造工場にて遠隔監視サービスを導入し、これまで手作業で行っていた検診作業を自動化させることに成功しています。
半導体製造工場内には動力設備が存在し、その維持管理が必要でした。遠隔監視サービス導入前は作業員が毎月1回、約900か所の電気メーターを巡回して目視確認を行っており、大きな負担がかかっていました。また自社で電気使用量の遠隔監視システムを構築するにはコストがかかっていました。
遠隔監視サービスを導入することにより、一つの画面からリアルタイムで設備の状況を把握することができるようになったため、巡回作業を行う必要がなくなり、業務の効率化につながりました。作業員を単純作業から解放することができるため、企画など本来の業務に集中することができ、新たな事業に対して労力をかけられるようになりました。
「IoT 遠隔監視活用事例 – KDDIのクラウドサービスを利用した事例」
生産設備の異常や故障の早期発見
ガソリン計量器の製造販売を行っている株式会社タツノではでは生産設備の遠隔監視により、リアルタイムに稼働状況が把握できるようになったそうです。また遠隔監視サービスより警報・故障をメールで受け取ることが可能になりました。
これにより、外出先でも工場設備の問題を検知することが可能になり、問題の早期発見につながりました。設備の異常を早期に発見することにより、故障を未然に防ぎ、設備の維持コストを削減することにもつながります。
「株式会社タツノ CASE STUDY – YE DIGITAl」
代表プロダクトの紹介
ここでは、遠隔監視サービスを提供しているいくつかの代表的な製品についてご紹介します。
Proceed Cloud(株式会社東京ファクトリー)
Proceed Cloudは株式会社東京ファクトリーが提供する、現場の生産状況を見える化するためのクラウドサービスです。具体的にはパソコンの画面上から工場内の状況を写真で把握することができます。月額5万円から利用が可能なサービスです。
A-Eyeカメラ(株式会社テクノア)
A-Eyeカメラは株式会社テクノアが提供する遠隔監視サービスです。工場内にネットワークカメラを設置し、生産設備の操作画面や積層信号灯の点灯状態の画像から稼働状況をAIで判別します。
A-Eyeカメラの設置に必要なものは市販のネットワークカメラとLAN環境のみですので、低コストで導入が可能です。
「AI画像認識を利用した工場の見える化システム『A-Eyeカメラ』」
コルソスCSDJ(NECプラットフォームズ株式会社)
コルソスCSDJはNECプラットフォームズ株式会社が提供する遠隔監視サービスです。運用形態や規模に合わせて、スタンドアロン・クラウド・オンプレミスから選択できるため汎用性の高いサービスとなっています。異常検知の通報手段はインターネット回線だけでなくアナログ回線も可能です。
製造業向け稼動監視パッケージ(株式会社日立システムズ)
株式会社日立システムズが提供する製造業向け稼働監視パッケージでは、既にある工場設備のままでデータを収集することが可能です。機器や設備などの制御に使われる制御装置である「PLC」に接続されていない設備でも、後付けのセンサーを利用して電気信号からデータを収集することができます。
それにより、新たに設備を入れ替えることなく、稼働状況の把握と作業負担の軽減を実現できます。
SynQ Remote(株式会社クアンド)
SynQ Remote(シンクリモート)は株式会社クアンドが提供する遠隔施工管理ツールです。現場に最低1名出向き、スマートフォンを用いてテレビ電話形式で現場の状況を配信していただきながら、もう一人がポインター機能で現場に対して画面上で具体的な指示を送ることが可能です。
SynQ Remoteを始めるにはパソコンやスマートフォンにアプリをインストールするだけで利用することができます。主な活用事例として、工場監査、機械の点検や現場への新人教育などがあります。
「施工管理をリモートでできるビデオ通話ツール|SynQ Remote」
Nossa 360(株式会社Nossa)
Nossa 360は360度カメラを使用するオンラインコミュニケーションツールです。現場で撮影する360度の映像を離れたところにいる管理者とリアルタイムで映像を共有しながら、コミュニケーションを取ることができます。視聴者側で閲覧できる映像は、視聴者が自ら操作して360度映像の好きな方向を視聴することが可能です。
「Nossa360 | 360度映像コミュニケーションツール」
Proceed Cloudではこんな課題が解決できます

製造現場の課題を解決するための手段として、遠隔監視サービスの代表プロダクトの一つであるProceed Cloudをご紹介します。
写真検索の手間を削減し製造情報の共有をスムーズに
Proceed Cloudのモバイル版のアプリを使うことで、部材と製造工程を写真に残すことができます。残した写真はパソコンやタブレット上で確認することができますので、部材と工程などの状況をリアルタイムで把握することが可能です。
進捗管理機能により外注先のリモート進捗管理が可能に
Proceed Cloudに工程情報を登録することで日次の工程管理を行うことができます。工程ごとに写真を残すことができ、作業者が現場の写真をProceed Cloudへ保存することで、現状をリアルタイムでシェアすることができます。そうすることにより進捗管理者が進捗状況をより把握しやすくなります。
生産情報データベースの構築による技術伝承
写真への書込みやコメント機能、検索機能などが搭載されているProceed Cloudを日常業務で利用するだけで、製造情報データベースに現場のデータが蓄積されます。そのため要領書や手順書などのマニュアル作成の手間を省くことができますし、細かい製造上の勘所をProceed Cloud上に残していくことが可能です。そのため、若手社員への技術伝承も容易になります。
Proceedクラウドについての詳しい説明は次のリンクをご参照ください。

また、Proceedクラウドの実際の現場での活用事例についてはこちらで詳しく解説しています。
現場の省人化・業務の見える化・低コスト化を実現
人材不足が叫ばれる製造業において注目される遠隔監視サービス。遠隔監視サービスを導入することにより、現場の省人化、業務の見える化や低コスト化などの効果が期待できます。
Proceed Cloudでは工程写真をベースに、サプライチェーンを通した製造情報の見える化と製造情報データベースの構築を行うエンジニアのためのデジタルツールです。パソコンやスマホから製造情報や技術者のナレッジを文書・画像・画像などを用いて共有することが可能ですので、是非ともご活用ください。 本記事が、皆さんの課題解決の一助となれば幸いです。