製造業向けSaaSとは?メリット・デメリットとSaaSスタートアップまとめ

特集

多くの業界でSaaSを活用したDX化の取り組みが増えていた中、参入障壁の高い製造業においては他業界と比較して、SaaS提供企業数やユーザへの浸透が進んでいない状況にありました。
しかし、近年のSaaS活用の浸透も後押しして、製造業向けにSaaSを提供する企業が増えてきております。
 SaaSという言葉は知っているが、自社の現場で利用できるのかわからない。今回はそんな方に向けて、SaaSの基礎知識やメリット・デメリットを解説し、SaaSスタートアップ企業が手掛けるサービスをご紹介します。

SaaSとは|必要な時に必要な機能にアクセスして利用するクラウドサービス

 SaaSとはSoftware as a Serviceの略で、提供元のサーバー(クラウド)で稼働しているサービスのうち、必要な機能にのみアクセスして利用する形態のことを指します。これまでのように、ソフトウェアを購入してメディアをPCに取り込んでインストール作業を行なって・・・といった作業は必要なく、インターネットを介して必要な機能にアクセスして利用出来るサービス形態となります。

製造業向けSaaSを選ぶ際のポイント|導入目的を明確にする

 SaaSの中には製造業に特化した機能を搭載しているものがあり、企画・設計・調達・生産・品質・販売・保守といった各フェーズに合わせて様々なサービスが存在します。

 このようなSaaSの導入を検討する際、最も大切にすべきポイントは「導入目的を明確にする」ことです。自社の強みや弱みを整理し、業績を上げるために何を最優先にすべきなのかを洗い出しましょう。それが導入目的となり、その領域に特化したSaaSを選定することで、最小限のコストで最大の効果が得られるようになります。

SaaSを製造業で利用するメリット・デメリット

 製造業でSaaSを利用するメリット・デメリットを以下の表にまとめます。導入を検討する際の参考にしてください。

メリットデメリット
・簡単に導入が出来る
・サーバーなどの自社インフラを用意する必要がなく、コストパフォーマンスが高い
・常にアップデートされた状態で利用出来る
・自社固有のカスタマイズが出来ない
・メンテナンス時間・期間を自由に設定出来ない

製造現場での活用が増えてきているSaaSスタートアップ企業のご紹介

ここまでの記事をお読みいただけた方は、SaaSがどのようなサービスであるかを理解し、メリットやデメリットについても把握できたと思います。

ここからは、実際に製造現場で用いられている代表的なSaaSについてご紹介していきます。

センサの電源を入れるだけでデータの見える化を実現「GenKan」

GenKanは多品種少量生産を行っている製造業をターゲットとして、現場の見える化を実現するためのIoTデバイスです。RFIDタグやカメラで取得したデータをシステムで可視化することによって、貴社の生産管理を分析・改善することが可能となります。

製品名GenKan
運営会社株式会社KOSKA
公式サイトhttps://www.koska.jp/
ポイント・既存設備にセンサデバイスを取り付けるだけで施工完了
・RFIDタグやカメラを用いて、現場の状況をリアルタイムに見える化
・全てのデータはシステムに集約され、工程進捗管理や原価計算を即座に実行

 IT技術によって見積査定業務の戦略化を実現「RFQクラウド」

RFQクラウドは、従来アナログ作業だった見積査定業務をデジタル化するシステムです。全てのプロセスが見える化されるため、取引によって得られる知識や経験がクラウド上に蓄積されます。これまで個人の能力に依存していた見積査定業務を戦略的に改善していくことが可能になります。

製品名RFQクラウド
運営会社A1A株式会社
公式サイトhttps://rfqcloud.com/
ポイント・アナログ作業な見積査定業務をクラウド上で一元管理
・過去の交渉履歴や現在の見積もり依頼状況をいつでも検索・閲覧可能
・従来バラバラだったフォーマットを統一し、効率的な相見積もりを実現

サプライチェーン断絶による損害を予防「Resilire」

Resilireはサプライチェーンを一元管理するだけではなく、災害などによってサプライチェーンが断絶された時に被害の情報が可視化されるため、素早い経営判断をサポートできるシステムです。コロナ禍においてサプライチェーンに大打撃を受けた企業は多く、このようなシステムを導入することで被害を最小限に留めることが可能になります。 

製品名Resilire
運営会社株式会社Resilire
公式サイトhttps://www.resilire.jp/
ポイント・サプライチェーンの管理から被害状況の把握までを担うシステム
・サプライヤーをツリー構造で表現することでサプライチェーン全体をシンプルに可視化
・災害時には、サプライヤーの被害状況を確認できる

360度映像を使用したオンラインコミュニケーションツール「Nossa360」

Nossa360は配信者が自分の周囲360度を撮影しながら、遠方にいる相手とコミュニケーションを取れるシステムです。閲覧者は好きな地点での360度映像を自由に見ることが可能です。コロナ禍で入場制限がされている現場であっても、密なコミュニケーションが実現できるため、業務効率化が図れます。

製品名Nossa360
運営会社株式会社Nossa
公式サイトhttps://lp.nossa360biz.com/
ポイント・撮影者の周囲空間情報を丸ごと配信し、遠方の相手とコミュニケーション可能
・周囲の情報が漏れなく伝わるため、バーチャル施設見学や現場管理に最適
・小型軽量カメラで低遅延の配信が可能

いつでもどこでも視聴可能な監視カメラシステム「Safie」

Safieは高画質映像をいつでもどこでも視聴可能な、クラウド型監視カメラシステムです。レコーダーを設置する必要がなく、カメラ本体も工事なしで取り付けられます。今すぐ監視カメラシステムを導入したい場合に適したサービスです。

製品名Safie
運営会社セーフィー株式会社
公式サイトhttps://safie.link/
ポイント・撮影した映像をリアルタイムにクラウドにアップロードする監視カメラシステム
・映像はパソコンやスマートフォンからいつでもどこでもインターネットを介して視聴可能
・複数のカメラを一括管理

プログラミング不要で検査・検品を自動化「AdaInspector Cloud」

AdaInspector Cloudは産業総合研究所の特許技術(HLAC:エイチラック特徴抽出法)を用いた検査・検品自動化システムです。製品の目視検査は熟練技を必要とする場合が多く、自動化が難しいことで知られています。一方で少子高齢化によって、目視作業員の確保が難しい製造現場が増加しています。AdaInspector Cloudを用いることで、高精度な検査・検品システムを短期間で構築できるため、これらの課題解決に取り組めます。プログラミング不要であることも現場関係者にとっては心強いポイントです。

製品名AdaInspector Cloud
運営会社株式会社アダコテック
公式サイトhttps://adacotech.co.jp/service
ポイント・熟練技が必要な製品の最終目視検査を自動化できる
・画像や音、センサの正常時データのみを使って学習し、見逃しゼロの検査システムを構築可能
・100枚程度の画像学習でほぼ100%の検査品質を実現

 IoTカメラ×AIで目視巡回点検をリモート化「LiLz Gauge」

LiLz Gaugeは1日3回の撮影で約3年間連続動作可能なIoTカメラを用いた、目視巡回点検リモート化システムです。屋内・屋外に設置された様々な計器類の値の読み取りがIoTカメラ×AIによって行われ、ネットワークを介してデータが送信されることで、遠隔地にいながらそれぞれの状態をチェックすることができます。

製品名LiLz Gauge
運営会社LiLz株式会社
公式サイトhttps://lilz.jp/lilzgauge/
ポイント・電源やネットワーク工事不要でIoTカメラを設置でき、目視巡回点検がリモート化される
・撮影画像をAIが解析し、計器の値を自動読み取りする
・他システムとも簡単に連携できるため、既存資産も有効活用できる

 売り上げを作る仕組みの構築をサポート「aperza cloud」

aperza cloudはFA・制御機器系企業に向けた、営業補助システムです。顧客管理や商談管理、メール配信、WebFAX、名刺管理といった機能が備わっており、これまで個人管理だったお客様の情報を一元管理できるようになります。特徴的な機能としてメール分析機能が備わっており、訪問前のメールのやりとりから、お客様が抱える課題を洗い出すことができます。また、営業失敗した理由の分析も可能であり、個人商店となっていた営業技術の全体底上げが実現できます。

製品名aperza cloud
運営会社株式会社アペルザ
公式サイトhttps://cloud.aperza.com/
ポイント・各営業マンが管理しているお客様情報を一元管理
・訪問前にお客様が抱える課題を把握できる
・営業が失敗した理由を分析し、改善できる

製造現場を簡単に見える化「Proceedクラウド」

Proceed クラウド

Proceedクラウドは日々撮影される工程写真を用いることで、製造現場を簡単に見える化できるシステムです。製造現場では日報やメール、現場の掲示板といったあらゆる媒体に重要な情報が散乱し、整理・管理しづらいという課題がありました。そこでProceedクラウドでは、工程写真と工程情報とを紐付け、システム上で適切に配置することで、製作状況を一元管理できるようにしました。また、各写真に自由に書き込みでき、コメントも残せるようにしたことで、作業手順書やトラブル対策シートとしての役割も果たします。このようにProceedクラウド上にあらゆる情報を残すことで、従来複雑だった情報の整理・管理が一気通貫で実現されます。そしてこの蓄積された情報資産は、将来の技術伝承や人材育成といった難しい問題をサポートすることにも繋がっていきます。

製品名Proceedクラウド
運営会社株式会社東京ファクトリー
公式サイトhttps://proceed-cloud.com/
ポイント・バラバラに記録されている製造情報を一元管理
・工程写真がシステム上で適切に配置されることで、製作状況を簡単に見える化
・各写真に情報を追加するだけで、作業手順書やトラブル対策シートが完成

まとめ

 製造業のSaaSについて基本的な知識やメリット・デメリットについて解説しました。サービスを導入する目的さえしっかり設定出来れば、最小限のコストで大きな効果を得られるのがSaaSです。まずは自社の置かれている状況を分析・整理するところから始めましょう!

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