製造業をはじめとする工場などの現場業務では、人材不足や技術継承の難しさがよりいっそうの課題になっています。
今まで積み重ねてきたノウハウを保持しながら、どのように効率的、持続的な運用をしていくかは、現場の管理職やビジネス部門が解決しなければならない課題です。
そうしたなか、最近は情報共有や各種管理業務を改善するITツールの検討を進める企業も多く出てきました。
マニュアルの作成もそのひとつ。エクセルやパワーポイントなど、既存のオフィスソフトで作成されることが多かったですが、現在ではマニュアル作成ツールが数多く提供されており、従来の紙での運用をすべてデジタル化できるものや、eラーニングの運用管理まで可能なものなど、目的に応じてさまざまなツールが存在します。
この記事では、現代におけるマニュアルの意義や目的を整理しながら、自社に必要なマニュアル作成ツールは何なのか、選定のポイントを解説。具体的なツールをご紹介します。
マニュアルが果たす機能
現場業務においてマニュアルは重要な役割を担っています。マニュアルの品質次第で、業務効率が大きく左右されると言っても言い過ぎではないでしょう。マニュアルが果たす機能には主に下記のようなものがあります。
業務状況の管理のベースをつくる
業務の手順を明文化することで、従業員ごとの手順のバラつきを防ぐとともに進行状況を可視化し、業務の遂行のための管理をスムーズに行うことができます。
知識の平準化
長年同じ従業員が業務を重ねていくと、どうしても手順や技術は属人化しがち。急な欠員や人員変更に対して対応が難しくなってしまいます。マニュアルによって従業員の業務における知識や技能の平準化を図ることができます。
教育コストの抑制
現場での生産性に大きな影響を及ぼすのが新しい担当者に対しての教育コスト。体系的にまとまったマニュアルがあることで、インプットする従業員のリソースを最低限に留めつつ、質の高い教育を行うことができます。
業務ノウハウの蓄積
従業員に活用されるマニュアルの特徴として、単純に業務の手順が記載されているだけでなく、業務を行う中で重視すべきポイントやノウハウが蓄積され、まとまっていることがあります。生産性向上のために非常に重要な機能です。
マニュアル作成の課題
現場の管理者やビジネス部門がマニュアル作成を行う際には、いくつかの課題が存在します。
作成の工数
すべての従業員にわかりやすく、理解してもらえるマニュアルをつくるには、現場に寄り添った表現や、詳細な解説など、一つ一つ多くの労力をかけながら作成する必要があります。
現場での活用促進
いくら工数をかけて作成をしても、現場で活用がされなければ意味がありません。マニュアルの質を上げていくのはもちろんですが、それが活用され、浸透していく仕組みや支援が必要です。
定期的な更新・メンテナンス
業務を日々重ねていく中で、マニュアルから外れていたり、対象外であるオペレーションが発生することがあります。そのたびに追加修正の必要があり、多くの工数がかかってしまいます。
マニュアル作成ツール導入のメリット
マニュアル作成ツールを導入することにより、そうした課題を解消することが期待でき、用途によっては今までにない効果を生み出すこともあります。マニュアル作成ツール導入の主なメリットをご紹介します。
マニュアル作成業務の効率化・質の向上
マニュアル作成ツールには豊富なテンプレートが用意されており、作成者によるバラつきがなく作成ができるほか、ツールによってはコンテンツの自動作成機能などもあります。短期間での作成が可能になるとともに、複数の人が作成・編集を行っても、質を底上げ・一定にすることができる機能が備わっています。
ナレッジの蓄積や共有が容易
マニュアル作成ツールは作成したマニュアルの更新・運用が容易に行えるという利点があり、日々の業務で蓄積していくナレッジを追加更新していけるほか、デジタル上でマニュアルを共有し、各拠点に展開することで、より広く価値のあるナレッジを効率的に展開することもできます。
活用実態や習熟度の可視化や教育・管理が可能
マニュアル作成ツールの中には、作成だけでなくコンテンツの配信機能やeラーニング、習熟状況の管理機能があるものもあり、マニュアルの活用・浸透状況を可視化することができます。
コストの削減
ツール導入によるマニュアル作成業務の効率化によって、人件費の削減が期待でき、またコンテンツの質を高めることにより、教育コストの削減に大きく貢献することができます。
マニュアル作成ツールの選定のポイント
ここまでマニュアル作成ツールのメリットをご紹介してきましたが、数多くのツールが存在する中で、どの要素に気をつけていけばよいのでしょうか。下記に主なポイントをご紹介します。
利用用途に合っているか
考える大前提として、「ツールを導入して何を実現したいか」をまずはきちんと定めることが大事です。その目的や用途に応じて、最適なツールを見極めることが必要になります。
操作性に問題は無いか
日頃の業務で円滑に運用するためには、マニュアルを作成する人・利用する人・管理する人など、業務に関わる全ての人にとって使いやすいものであることが必要です。無料トライアルを実施しているツールも数多くありますので、トライアル期間にいろいろな立場の人に使ってみてもらい、活用イメージが湧くか検証してもらうことも有効でしょう。
サポートが充実しているか
ツールの導入支援や利用中のサポート、ユーザー向けセミナーなど、活用に対してのケアが手厚く行われるかも、検討において抑えておきたい重要なポイントです。特に導入後に生まれるさまざまな懸念や質問に対しての継続的なケアは具体的な体制やイメージまで説明してもらえるとより安心して利用できるでしょう。
クラウド型かオンプレミス型か
ツールの導入の形式として、ネットワークからアクセスし利用するクラウド型と、自社にサーバーを導入して運用するオンプレミス型の2つがあります。導入コストやサービス提供の柔軟性からクラウド型のツールが主流ですが、社内の状況や利用用途、扱うデータによって最適な方を選択する必要があります。
【活用目的別】社内教育・共有のための業務手順書を作成したい方におすすめのマニュアル作成ツール
COCOMITE
COCOMITEはコニカミノルタ株式会社が提供するオンラインマニュアル作成サービスです。業務手順をわかりやすく、いつても、どこでも、だれでも共有できるソリューションとして、基本レイアウトに沿って入力していくだけで、画像、動画、PDF、Word、Excel、PowerPointが入った様々なタイプのマニュアルを作成・更新できるほか、オンラインでの共有リンク機能やレスポンシブデザインを実現しています。
製品名 | COCOMITE |
運営会社 | コニカミノルタ株式会社 |
公式サイト | https://cocomite.konicaminolta.jp/ |
価格(月額) | エントリープラン:2万4200円 スタンダードプラン:6万6000円 エンタープライズプラン:24万2000円 |
Dojo
Dojoは株式会社テンダが提供するマニュアル自動作成ツールです。自動作成機能を持ち、特別な知識やスキルがなくても手軽に高品質な紙媒体やデジタルのマニュアルが作成できることが強みです。累計導入企業2,600社以上で、中小企業を中心に導入が広がっています。
製品名 | Dojo(ドージョー) |
運営会社 | 株式会社テンダ |
公式サイト | https://tepss.com/dojo/ |
価格(月額) | スタンドアロン/フローティング(価格は要問い合わせ) |
i-share
i-shareは株式会社クイックスが提供するマニュアル作成ソフトです。マニュアル制作専門会社である同社の知見やノウハウが詰まったツールで、画面の案内に沿って入力を進めていくだけの簡単な操作で、紙・Web・PDF・電子マニュアルへの変換や、動画の埋め込みなどマルチメディアに対応したマニュアル作成が行えます。
製品名 | i-Share |
運営会社 | 株式会社クイックス |
公式サイト | https://www.kwix.co.jp/product/product1 |
価格(月額) | 初期費用:55万円 Basic plan:13万4000円 Complete plan:21万円 |
【活用目的別】操作手順マニュアルを作成したい方におすすめのマニュアル作成ツール
iTutor
iTutorは株式会社ブルーポートが提供するマニュアル作成自動化ソフトです。PCの操作を自動的にキャプチャしてスライド化し、操作説明も自動でテキスト化されるので、大量の画面キャプチャが必要になる操作説明マニュアルつくりに非常に便利なツールです。特別な知識が無い方でも動画編集が容易に可能な機能も兼ね備えています。
製品名 | iTutor |
運営会社 | 株式会社ブルーポート |
公式サイト | https://itutor.jp/ |
料金プラン(買い切り) | Mac専用エディション:16万5000円~ エントリービデオエディション:27万5000円~ エントリーオフィスエディション:27万5000円~ スタンダードエディション:49万5000円~ プロフェッショナルエディション:66万円~ |
EZLecture
EZLectureは株式会社ラディアスが提供するマニュアル作成ソフトです。アプリケーションを普段通り操作するだけで、画面と手順を瞬時に記憶し、マニュアルを自動作成することができ、 パワーポイントのような操作性で編集も可能。豊富な出力形式に対応しているのも魅力の一つです。
製品名 | EZLecture |
運営会社 | 株式会社ラディアス |
公式サイト | https://www.ezlecture.com/ |
料金プラン(買い切り) | 1ライセンス:38万5000円 ※複数ライセンス割引あり |
【活用目的別】視覚的に理解できる動画マニュアルを導入したい方におすすめのマニュアル作成ツール
tebikiはtebiki株式会社が提供するクラウド動画教育システムです。現場のスタッフがOJTで教えることをスマホで撮影するだけで、音声認識システムが字幕を自動生成。正しい/間違い/強調など、動画への図形挿入もかんたん。伝わる動画マニュアルがすぐに作れます。
製品名 | tebiki |
運営会社 | Tebiki株式会社 |
公式サイト | https://tebiki.jp/ |
価格(月額) | 要問い合わせ |
【活用目的別】ナレッジの蓄積・共有などの運用管理もしたい方におすすめのマニュアル作成ツール
Teachme Bizは、株式会社スタディストが提供するマニュアル作成・共有システムです。PCはもちろんスマートフォンややタブレットでも簡単にマニュアル作成が可能で、作ったマニュアルの配信機能、トレーニング機能も兼ね備えており、分析や運用も可能です。小売・飲食・宿泊・製造・物流・医療から金融まで、業種業界を問わず利用実績があります。
製品名 | Teachme Biz |
運営会社 | 株式会社スタディスト |
公式サイト | https://biz.teachme.jp/ |
価格(月額) | スターター:5万円 ベーシック:10万円 エンタープライズ:30万円 |
NotePM
NotePMは株式会社プロジェクト・モードが提供する。社内Wikiを用いたナレッジ共有ができるツールです。マニュアル作成機能もあり、高機能エディタとテンプレートで、バラバラなフォーマットを標準化。情報の投稿・更新が簡単なため、それを社内Wikiに掲載していくことでナレッジを蓄積・共有できます。
製品名 | NotePM(ノートピーエム) |
運営会社 | 株式会社プロジェクト・モード |
公式サイト | https://notepm.jp/ |
価格(月額) | プラン8:5280円 プラン15:9900円 プラン25:1万6500円 プラン50:3万3000円 プラン100:6万6000円 |
Qast
Qastはany株式会社が提供するナレッジ共有を実現するクラウドツールです。投稿内容はマニュアルとして活用可能です。マニュアルは閲覧しやすいようピン止めや未読の可視化などができます。部門や拠点間で点在しているノウハウやナレッジを一元管理したい、などの要望に応えるツールです。
製品名 | Qast |
運営会社 | any株式会社 |
公式サイト | https://qast.jp/ |
価格(月額) | スタンダードプラン:要問い合わせ エンタープライズプラン:要問い合わせ |
Proceedクラウド

Proceedクラウドは株式会社東京ファクトリーが提供する製造業向けの情報共有ツールです。
製造現場で撮影した写真をProceedクラウド上でデータベース化することで、手間無く工程・部材毎に整理され、かつ、製造情報の共有や技術継承、資料作成への活用等に役立てられるので、育成業務の大幅な効率化が期待できます。
製品名 | Proceedクラウド |
運営会社 | 株式会社東京ファクトリー |
公式サイト | https://proceed-cloud.com/ |
価格(月額) | スタンダードプラン:5万円 エンタープライズプラン:要問い合わせ |
現場の改善に必要な用途や目的を見極めることが重要
ここまで、マニュアル作成の意義や課題、マニュアル作成ツールによって実現できるメリット、具体的なツールについてご紹介してきました。
先述のとおり、ツールの選定に重要なのは自社の現場にとって何が必要で、何を目的にするかを明確にすることです。
これはマニュアル作成ツールに限らず、すべてのツールの検討時にいえることでしょう。組織の生産性向上のためにまずは自社の課題や「見える化」することが大切です。
自社現場におけるツール活用目的を明確にして、最大限の効果を得られる取り組みを実現しましょう。