造船業界で拡がり始めた3D技術の紹介と活用事例

特集

本記事をご覧の方の中には、手書き図面から2D CADへと移行した時に大きな衝撃を覚えた方もいらっしゃるのではないでしょうか。2D CAD以前は、当然線を手書きしなければならず、図面作成に多大な時間を要しており、後工程で修正が入った場合などには地獄のような作業が待っていました。それがデジタル化されたことで、線引きに留まらず、修正作業も飛躍的に楽に実施できるようになりました。この技術革新が与えた恩恵は、2D CADしか知らない世代も想像に容易いのではないでしょうか。

一方で、近年の造船業界では新たな技術革新の芽が出始めています。2D技術から3D技術の活用へと駒が進んでいるのです。

本記事では、造船業界で拡がり始めた3D技術の概要を簡単に解説し、その活用事例を紹介します。概要をつかめた方は、最後に紹介する弊社ホワイトペーパーをぜひご覧になってみてください。本記事で紹介する事例の詳細や、他の事例について学ぶことができます。

造船業界で拡がり始めた3D技術:技術概要解説

皆様の中にも、VR(Virtual Reality:仮想現実)やAR(Augmented Reality:拡張現実)という言葉をご存知の方がいらっしゃるのではないでしょうか。今、これらの技術が造船業界に拡がり始めています。両者の違いを以下に示します。

VR(Virtual Reality:仮想現実)

VRとは、コンピュータ上に仮想空間を作り出し、そこに私たちがいるかのような体験をさせる技術のことを指します。多くの場合、ヘッドマウントディスプレイを装着し、そこに仮想空間を映し出します。ヘッドマウントディスプレイによって、現実空間から切り離されるため没入感を得やすく、あらゆることを擬似体験するのに適しています。

AR(Augmented Reality:拡張現実)

ARとは、現実空間を拡張し、元々そこにはない情報を付加する技術のことを指します。VRは仮想空間上での体験ですが、ARはあくまでも現実世界が主体です。多くの場合ゴーグルなどを装着し、ゴーグルを通して見ている視野に対して新たな情報を付加させます。視界に入る情報だけでは伝わらないことを認識できるため、作業補助や指示することに適しています。

造船業界に拡がり始めた3D技術:具体的事例

造船業界で拡がり始めた3D技術の概要について簡単に解説しました。ここからは、その3D技術を活用した具体的事例についてご紹介していきます。

VRを活用した塗装作業員の訓練時間・育成費用の削減:サムスン重工業(2020年頃)

概要

作業員はヘッドマウントディスプレイを装着し、スプレーガンを持ちます。ヘッドマウントディスプレイには塗装対象物とスプレーガンが映し出されており、現実世界と連動しています。作業員がスプレーガンを操作すれば仮想空間上もその通りに動作するため、塗装作業を擬似体験できます。

解決する課題

塗装作業修練の十分な機会の確保と教育コスト削減

背景

塗装作業は船舶品質を決定する重要な工程であるにも関わらず、その修練に十分な機会を与えられていませんでした。専門技能人材教育を実現する体系的な教育体制が整っていませんでした。

解決手段と効果

  • 仮想空間上の船舶モデルに対して、スプレーガンによる塗装を擬似体験する
  • 塗膜の厚さや塗装速度、方向、角度などをリアルタイムにフィードバックすることで技能評価できる
  • 仮想空間上では塗装作業を繰り返し行えるため、十分な修練の機会を提供できるようになった
  • 教育のために船舶実部材を用意する必要がなくなったため、コスト削減に繋がった

ARを活用したタービン製造工程の効率化:Novantia(2020年頃)

概要

作業員はスマートグラスを装着して製品の組み立てを行います。スマートグラスに映し出される仮想オブジェクトや2D図面と実物を照らし合わせることで組み立て作業を効率的に行えるようになります。

解決する課題

組み立て初心者のヒューマンエラーの削減

背景

組み立て作業経験が浅い初心者にとって、2次元の組み立てマニュアルから完成品イメージを想像することは難しく、ヒューマンエラーが頻発していました。

解決手段と効果

  • スマートグラスを装着することで、組み立てマニュアルの内容を立体的に図示できるようになった
  • 複数のスマートグラスを同期して同じ仮想オブジェクトを共有することで、熟練者が初心者に適切な指導を行えるようになった
  • 初心者は組み立てマニュアルを立体的に捉えられるようになったことに加え、適切な指導を受けられるためヒューマンエラーが削減された

弊社ホワイトペーパーでは、全53事例をご紹介中です!

弊社のホワイトペーパーでは、今回ご紹介した3D技術の事例2つを合わせて全53の事例(新しいハードウェア・情報通信技術テーマ含)をご紹介しています。その中では今まで知ることが難しかった海外の事例についても翻訳し、掲載されています(53例中39が海外事例)。皆様にとって参考になる事例が必ず見つかるはずです。ご一読いただければ幸いです。

造船業界におけるDX事例50>>

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