品質向上へ繋がるDX化施策とは

特集

近年、デジタルトランスフォーメーション(DX)はさまざまな業界で求められており、各企業がDX化を推進しています。製造業でも工場に情報技術を取り入れたスマートファクトリーをはじめ、あらゆる取り組みが進んでいます。特に製造業では品質保証・品質向上が求められており、製造業は工場でのDXの活用を模索しているのが現状です。

この記事では製造業が品質向上するためのDXを用いた施策についてご紹介します。

製造業の品質管理・品質保証とは

DXの施策を紹介する前に、製造業における品質管理業務について説明します。特に「品質管理」と「品質保証」の違いや「品質管理」の言葉の定義について詳しく解説します。

「品質管理」と「品質保証」の違い

「品質管理」と「品質保証」、言葉が似ていることから意味を混同しがちですので、まずはこの2つの言葉の定義を説明します。

「品質保証」とは

品質保証は、自社製品が既定の品質を維持しているかを確認し、納品後も顧客に安心や満足を保証するための体系的な活動のことを指します。QA(Quality Assurance)とも表します。具体的には、品質保証の根拠となるデータのチェックや調査、クレーム対応などの業務が該当し、各部門へのフィードバックを通じて、顧客が満足できる品質の確保に努めます。

「品質管理」とは

一方で品質管理は製品の製造時に不良品を出さないための手段や方法を実施する活動のことを指します。英語ではQC(Quality Control)とも表します。具体的には製品の不良発生に関する分析、工程の見直しなどを行い、製造プロセスの管理や改善を図る活動を指します。さらに体系的に説明すると、製造の品質管理には「工程管理」「品質検証」「品質改善」の3つに分類されます。

「工程管理」は作業の工程や手順が適正な状態であることを管理することです。高い品質を担保するために人材の教育や機器や設備の維持管理も工程管理に含まれます。

「品質検証」は製品の品質を保つために製品を検査したり、品質の高い製品が製造できる状態を維持するために監視を行ったりすることです。工程管理や監視業務が適正に行われていることを監視することも品質検証に該当します。

「品質改善」は企業が定める品質に満たない不適合な製品を生産しないよう未然に防ぐ策を講じたり、仮に不適合の生産した場合に再発防止策を講じ、業務改善を行ったりすることを指します。

製造業における品質管理の課題

日本の製造業は人口減少、少子高齢化といった社会背景が重なり、人材不足に陥っています。多くの製造業は、特に工夫もなくこれまで通りに企業活動を行ってしまうと製品の品質を担保することがより一層厳しくなってしまいます。そのため、製造業が新たな市場価値を創出する必要が出ており、デジタル技術を活用した業務プロセスの改革が不可欠です。

ここでは中小企業と大手企業の事例を2つずつ紹介します。

品質向上につながるDX化事例

事例①:IoTを活用し品質と生産効率を向上させた社員数15名の企業

株式会社富士製作所は1962年5月に設立した、射出成型を用いたプラスチック製品製造の会社です。社員数はわずか15名。同社はIoTネットワークを活用した最新の射出成型機システムを導入し、機器の設定や品質管理など、今まで人に頼ってきた業務をデジタル化することにより、品質と生産性の向上を図りました。

同社では射出成型機の設定を紙で行っていましたが、

「過去の設定情報を探すのに時間を要する」
「熟練者の経験と勘に依存している」

などといった課題が存在していました。そこで設定値、スクリューの動き、稼働中の温度変化、生産個数などの数値を成型機メーカーが提供するツールを用いて、情報を収集・蓄積を数年間行いました。それらの情報を利用することで、データ設定時間の大幅短縮と品質面の強化を図ることができました。

さらに、成型機の状態を常時監視し、予め設定した閾値を超えた場合にアラートや自動停止を発生させることにより、未然にトラブルを防止することができ、職場環境の安全性も向上しました。

事例②:業務のデジタル化に抵抗する職人文化を乗り越え

1933年に東京の大崎で木型の製造販売企業として創業し、1982年には山形県に工場を新設した会社で、射出成形用金型の設計・製造を行っています。従業員数は2020年時点で63名。

同社は従業員数が最大300人を超えることもありましたが、市場環境の変化などにより業績が悪化し、一時は従業員数が30人を下回りました。その後、製造業のコンサルティング業務を担う株式会社O2の傘下に入り、AI技術などの最新技術を活用して業務改善を図りました。従業員の中にはデジタル化を拒む職人気質の方も一定数いたものの、これまで人に頼っていた品質管理業務を自動化することで業務の効率化に成功し、業績回復を成し遂げることができました。

同社は、さまざまな取り組みを行っていますが、代表的な事例を3つ紹介します。

まずは「業務のペーパーレス化」です、ペーパーレス化を推進することで工場内の機器の稼働データを蓄積しました。それにより例えば、工場機器の稼働状況が営業社員にもわかるようになり、迅速な営業活動ができるようになりました。

2つ目は「AIの活用」です。これまでベテラン職人の経験と勘に頼っていた見積書作成や金型の品質管理業務をデータ化し、AIによる判断により自動で見積書の作成や金型の修正を行えるようにしました。

3つ目は社内で蓄積したデータやノウハウを活用したシステムの外販です。同社が導入している「工場全体の就業管理・営業管理」と「工場機器のデータを用いた作業管理・品質管理」が可能なシステムを他社に売り込むことにより、既存事業である金型製造に加え、システム販売という新たな事業の柱を構築することができました。

事例③:工場のIoT化による品質向上

大手電機メーカーの三菱電機では「e-F@ctory」という工場内で生産情報とITを連携させる仕組みを推進しています。具体的にはIoT(Internet of Things)技術を用いて、工場に存在するあらゆる機器や設備にセンサーを取り付け、稼働情報を収集・分析を行っています。また、エンジコンピューティングと呼ばれる、生産現場に近い場所にコンピュータを配置してリアルタイムにデータを分析・活用を行っています。

現場では工場内の従業員の作業習熟度が人によってばらつきがあったり、作業ミスが発生するという課題が生じていました。

これらの課題を解消すべく、同社では「e-F@ctory」の実現のため、以下の開発を推進しました。

  • FA-IT連携技術:生産現場データとITシステムの接続や処理の技術
  • 制御技術:自動化に必要なロボット技術やセンサー機器を統括制御し、生産現場から必要なデータを収集する技術
  • 産業用ネットワーク技術:生産現場で大量データを高速通信したり、効率的に収集したりする技術

上記取り組みにより、作業手順の電子指示によるミスの防止や作業改善を図ることに成功しました。

事例④:市場環境変化による製品の多様化に対する対応

大手電機メーカーの富士通株式会社では「富士通生産方式(FJPS)」として、人に依存しないものづくりを目指しており、自ら必要なツールを作るプロセスを同時並行化することを富士通グループ全体の活動として推進してきました。

同社の課題としては、市場環境変化による製品の多様化およびカスタマイズ化への対応や納期の短縮化への対応、製品の複雑化・高密度化への対応、技術継承の継続強化などが存在しました。

設計のデジタル化プラットフォームである「FTCP(Flexible Technical Computing Platform)」を導入したことにより、製品開発プロセスの手戻り減少、品質向上、納期短縮などといった成果を得ることができました。

DX化により品質向上を図ることができる

既存業務のDX化を推進することにより、製品品質の向上を図ることもできることがお分かりいただけたのではないでしょうか?また、品質面だけでなく作業効率化に伴う納期短縮などといったプラスの効果も見られました。さらには、システムの外販などといった新規ビジネスの創出にもつながることもあり、DXがもたらす効果はさまざまです。

DX化は大手企業だけでなく多くの中小企業でも実績が出てきています。弊社が提供する「Proceedクラウド」は工場内の製造情報の見える化と製造情報データベースの構築を実現できるデジタルツールです。当システムを導入することにより製造現場のDX化を推進することができます。

本記事が、皆さんの課題解決の一助となれば幸いです

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