ライン生産方式とは?種類、メリット、デメリットまとめ

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工場で製品を生産する方式として代表的なものにライン生産方式とセル生産方式があります。ライン生産方式は大量生産を前提とした自動車工場などで採用され、セル生産方式は受注生産が主な重工業や多品種生産が求められる小型家電などで利用されるのが一般的です。

この記事ではライン生産方式とは何か、種類やメリット、デメリットについて解説したいと思います。セル生産方式についてはこちらの記事で解説しているので、こちらも合わせてご覧ください。

セル生産方式とは?セル生産方式の基本やメリット、デメリット、将来性についてのまとめ>>

ライン生産方式とは

ライン生産方式とは製品をベルトコンベヤ上に流し、工程毎に配置した作業者が順番に部品を組付けることで、連続的に製品の製造を行う生産方式です。大規模な事例としては1900年代にアメリカのフォード・モーター社がT型フォードを大量生産するためにライン生産方式を導入したことが有名で、日本では1960年頃の高度経済成長期に自動車や家電製品を製造するのに導入が進められました。今でも自動車産業ではほとんどの工場でライン生産方式が用いられています。また製造業に限らず、菓子や飲料などを製造する食品工場などでも多く導入されています。

セル生産方式が多品種少量生産を得意とするのに対し、ライン生産方式では同じ仕様の製品を大量に生産する少品種多量生産を得意としていますが、近年では消費者ニーズの多様化から製品オプションが増加したことで、工程の一部をライン生産方式からセル生産方式へ変更するという流れもあります。

製品を流す方法としてはベルトコンベヤ以外にも自動搬送車を利用するAGV(Automatic Guided Vehicle)式や製品自体が緩やかに動いていく自走式などがあります。

ライン生産方式を用いて自動車を組立てる様子が公開されているのでこちらで紹介します。自動車がベルトコンベヤにそって動きながら作業員の方が決められた工程にそって部品を組付けているのが分かります。この他にも多くの自動車メーカーが生産ラインを公開しているので興味のある方は調べてみてください。

ライン生産方式の種類

ライン生産方式は少品種多量生産を基本としていますが、生産品種の種類によって大きく2つに分けることが出来ます。

単一品種組立ライン

単一品種組立ラインは1つのラインで1種類のみの生産を行う最もシンプルな方法です。一度設計してしまえば、ラインの変更等はなく同じ仕様の製品を作り続けるラインになります。

多品種組立ライン

多品種組立ラインは1つのラインで複数製品の生産を行う方法です。多品種組立ラインでも製品を流す期間を分けて1品種ずつ生産するバッチ式組立ラインと既存のラインを組み合わせて複数の品種を生産する混合式組立ラインに分けることが出来ます。

ライン生産方式のメリット

ライン生産方式のメリットをまとめると次のようになります。

少品種での生産効率が高く生産量の予測が立てやすい

ライン生産方式は全ての工程のラインが完成すれば、連続的に製品を製造できるので工程ごとに個別のユニットに分かれたセル生産方式と比べると生産効率が高くなります。また、作業者の熟練度や作業工程の改善によりコンベヤ速度を上げれば生産性も上がるので、生産効率を示す指標が分かりやすいと言えます。その他にも、ライン生産方式では工程上に不良等が発生しない限り、一定の速度で生産が行われるので生産量の予測が立てやすく、計画生産が容易な生産方式と言えます。常に一定の需要が予測できる製品にはライン生産方式が適していると言えます。

作業者の教育コストが安い

ライン生産方式では1つ1つの工程が比較的単純な作業で構成されるので、作業者に短期間の教育を行えば生産を行うことが出来ます。これにより1人の作業者が様々な工程を担当し、多能工化が求められるセル生産方式に比べると1人当たりにかかる教育コストを低く抑えることが出来ます。自動車産業などでは市場の状況に合わせて一定期間のみ作業者を採用する「期間工」などの制度が多く用いられています。作業を単純化させることで技能の属人化を防ぐという観点でもライン生産方式は優れていると言えます。

機械化、自動化がしやすい

ライン生産方式は少品種多量生産が前提なので、工作機械の導入による機械化、自動化がしやすいと言えます。自動車工場の人気車種のラインではほぼ全ての工程を自動化している場合もあります。一般的には高度な技能が求められる溶接工程や重量がある部品の組立工程などは工作機械による自動化を行い、その他は人の手で行うことが多いです。また、大量生産を行うことでデータの比較が行いやすくAIの画像認識技術などを導入しやすいです。そのため、最近では検査工程を自動化している工場も多く、品質の安定性も向上しています。

製造業におけるAI画像認識とは?AI画像認識サービスまとめ>>

実際に組立工程の多くを自動化しているフォルクスワーゲンの生産工程が公開されているのでこちらも紹介しておきます。溶接から組立てまでほとんどを機械が行っています。

ライン生産方式のデメリット

ライン生産方式には一方で次のようなデメリットもあります。

セル生産方式に比べるとイニシャルコストが大きい

ライン生産方式は製品を流すためのベルトコンベヤや自動化を行うための工作機械などが必要なため、セル生産方式と比べるとイニシャルコストが大きくなります。また、細分化された工程ごとに作業者が必要なため、作業人員の数も多くなります。このため、生産予測が立てにくく受注生産を行うような重工業では導入が難しく、長期的な需要が見込まれ、多額の設備投資を回収できるような市場規模の大きい製品の製造で導入するのが一般的です。

作業者のモチベーション維持が難しい

ライン生産方式では工程の多くが単純作業のため、作業者が自身の成長を感じられる機会が少なく働くモチベーションを維持することが難しいとされています。これにより、比較的離職率が高く人材の長期的な確保が課題の1つとして上げられています。作業者のモチベーションを向上させるための施策としては主に賃金等の待遇の向上や、優秀な改善提案に対する表彰などメーカー各社で様々な工夫が用いられています。

多品種少量生産には不向き

ライン生産方式は同じ仕様の製品を連続的に流すことで生産効率を上げる方式のため、顧客の要望に合わせてカスタマイズを行う多品種少量生産には不向きです。最近では大量生産を行う製品でもオプションなどが増えたことでライン生産方式からセル生産方式へ切り替える工場もあります。

不良が出た場合の影響が大きい

ライン生産方式は工程が全て決められているため、高品質な製品を連続的に生産できますが、工程そのものの設計が間違っていた場合や検査体制に問題があった場合は不良を大量に出してしまいます。自動車や家電製品の数万台規模のリコールなどが発表されることもありますが、ライン設計のミスが与える影響が大きいこともライン生産方式のデメリットと言えます。

まとめ

  • ライン生産方式はコンベヤに製品を流しながら連続的に製造を行う生産方式。
  • 少品種多量生産向きで導入コストが高いため、市場規模の大きい製品で利用される。
  • 工程に単純作業が多くモチベーション維持が難しく人材の確保が課題となっている。
  • 近年では顧客の要望に対応するため、一部をセル生産に移行する流れもある。

ライン生産方式について解説しました。多くの方にとって工場での生産というとライン生産方式を思い浮かべるぐらい以前から採用されている代表的な生産方式ですが、時代の流れと共に進化が求められている生産方式とも言えます。

このような背景から、最近ではライン生産方式とセル生産方式のいいとこ取りを行ったダイナミックセル生産方式という新たな生産方式も生まれています。ダイナミックセル生産方式についても解説していますので、こちらの記事も合わせてご覧ください。

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